会誌:第31巻−3号[目次]

平成27年度 川上記念賞 第30回日本臨床内科医学会 (東京) のお知らせ
巻頭言
生きている限り歩き続ける ―健康寿命の延伸を目指して―東京内科医会 理事 染谷 泰寿185
特別寄稿

尿酸代謝と糖尿病合併症をつなぐ櫛山 暁史

186

日本における循環器疾患治療のエビデンス小川 久雄

192
東京内科医会 第200回臨床研究会

発症から15年を経過後,造血幹細胞移植を行い輸血から離脱できたMDSの一例大竹 志門

198

最近のMDSの病態の理解と治療方針の変貌小林 寿美子

202

肺がんの症状 ―特に腫瘍随伴症候群について―高橋 典明

206
[東京内科医会 第200回臨床研究会 抄録]210

東京内科医会臨床研究会 200回を振り返って菅原 正弘

211
医療連携室紹介
日本大学医学部附属板橋病院 ―医療連携センターについて―高山 忠輝,他213
特集
市民セミナー2015 肥満と生活習慣病 ―年齢による適正体重とその管理―

東京内科医会市民セミナー2015清水 惠一郎

215

肥満の栄養管理金澤 良枝

218

肥満を伴った糖尿病五十川 陽洋

228

睡眠時無呼吸症候群若井 安理

233

脂質異常症谷田貝 茂雄

236
ひろば

先輩医師をたずねて(20)松下 昌雄先生 (新宿区医師会)

242

俳句鈴木 良戈

243
理事会議事録244
会員の動向251
投稿規定252
編集後記高橋 俊雅254

生きている限り歩き続ける ―健康寿命の延伸を目指して―

東京内科医会 理事 染谷 泰寿

小生のクリニックは東京都狛江市にあり、「生きている限り歩き続ける」を目標として開業し、今年で12年目を迎える。当院に通院している患者さんの平均年齢も開業当時は60歳くらいであったが、現在では65歳になろうとしている。これは、日本全国のクリニックに通院している患者の平均年齢とほぼ等しい。

約10年後(2025年)は、団塊の世代が全員後期高齢者となる75歳を迎え、当院に通院している患者さんの平均年齢も70歳を超えることが予想される。このような超高齢化社会では「健康寿命の延伸」が望ましい。健康寿命の延伸は、健康日本21(第2次)における中心課題となっている。この背景としては、平成25年の段階において、平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間)の差は、男性で9.02年、女性で12.40年と報告されている。平均寿命と健康寿命の差、つまり介護が必要となる不健康な期間が男女ともに10年前後存在し、今後平均寿命の延伸と健康寿命の差がますます拡大すれば、医療費や介護給付費の多くを消費する期間が増大することになる。平均寿命と健康寿命の差(いわゆる介護期間)をつくる原因としては、脳血管疾患、心臓病、関節疾患、骨折・転倒、認知症、高齢による衰弱、その他に分けられる。介護が必要になった原因は男女で大きく異なる。脳血管疾患・心臓病を原因として介護が必要になる割合は、男性37%、女性19.6%である。しかしながら、関節疾患、骨折・転倒、認知症、高齢による衰弱で介護の原因となるのは、男性32%であるが、女性では58%に及ぶ。このデータが示すのは、健康寿命を延伸するためには生活習慣病を防ぐと同時に、フレイル(虚弱)・サルコペニア(筋力低下)・認知症の予防が大切であるということである。

私たちはBMIにかかわらず、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病の患者さんに対し、具体的に食事制限と有酸素運動(散歩など)を指導してきた。しかしながら、やせている患者さん(特に女性)に食事制限をするとやせが助長され、フレイル、サルコペニアに至るケースや肺炎を発症するケースが散見される。日本人の食事摂取基準2015年版では、70歳以上に対して、BMIの範囲21.5~24.9 kg/m2が目標になった。高齢の生活習慣病の管理には従来の通りの指導ではなく、適切な栄養摂取と筋力向上のためのトレーニングを指導することが望ましい。

私たち開業医は、一人ひとりの患者さんに対して身体機能や生活背景を踏まえた診療体制を整えると同時に、平均寿命と健康寿命の差を短縮すべく、高齢者の疾病予防と健康増進、介護予防にも積極的に取り組み、この超高齢化社会を医療そして社会の面から支えていく必要がある。これからも「患者さんが生きている限り歩き続ける」を目指して診療していきたい。