会誌:第28巻−2号[目次]

東京内科医会第29回セミナー、第26回医学会のお知らせ
第30回日本臨床内科医会総会のお知らせ
平成24年度“川上記念賞”受賞候補者推薦のお願い
巻頭言
ACCORD試験から思うこと東京内科医会 理事 井関 惠子109
原 著

当診療所における小児診療の病診および診診連携の現況について柳澤 孝嘉

111
東京内科医会 学術講演会

患者さんの病態から考える上腹部不定愁訴への薬物治療二神 生爾,他

119

腎交感神経アブレーション術による高血圧根治療法市原 淳弘

124

冠動脈疾患に対する脂質低下療法 ―ガイドライン改訂をふまえて―坪井 秀太,代田 浩之

128

脳卒中予防と脂質管理内山 真一郎

134
東京内科医会 第187回臨床研究会

過敏性肺炎の2例土屋 公威

145

日常診療で過敏性肺炎を疑うポイント宮崎 泰成,他

149

MR enterocolonographyにより,内視鏡通過不能の狭窄部より深部の病変評価が可能であったクローン病の1例藤井 俊光

153

クローン病評価方法の進歩 ―当院のMRECの試みを中心に―長堀 正和

160
東京内科医会 市民セミナー2012

東京内科医会市民セミナー2012 レポート清水 恵一郎

167

生活習慣病と認知症井藤 英喜

169

[東京内科医会 市民セミナー2012 抄録]

180
特集 新旧会長にきく

座談会 新旧会長にきく望月紘一,菅原正弘,清水恵一郎,木内章裕,石川 徹

187
ひろば

中央アジア ―ウズベキスタンを訪ねて―野口 晟

203

先輩医師をたずねて(11) 森 昌二先生(杉並区医師会)

207

短歌林 宏匡,横田 英夫

208
理事会報告209
会員の動向214
投稿規定217
編集後記若井 安理218

ACCORD試験から思うこと

東京内科医会 理事 井関 惠子

私は糖尿病を専門にしているのですが、ACCORD試験以来、臨床の場からのエビデンスの発信についてとりとめなく考えています。

2010年のACCORD試験で、HbA1cの正常化を目指すとかえって死亡率が上がったため研究が途中で中止になったという報告が衝撃をもってなされました。それを読んだとき、あんな無理なことをすれば死亡率もそりゃ上がるだろうとまず思いました。しかし、目標値はもっとゆるくていいという論調には違和感をもちました。サブ解析の後、罹病期間が長く臓器障害が想定できる人には低血糖や体重増加を起こすことの危険を考慮して治療することが必要だというメッセージになりましたが、それは実際には「目標値にはいかないけれど仕方ないよね」と言いながらすでに行っていることだと思いました。これは、この人にこれ以上薬をふやせば低血糖が起こりそうだとか、食事療法がうまくいかない人にインスリンを増やしても太っていくばかりだという経験からくる感覚です。

毎日の臨床は、生身の患者さんを前に個々の患者さんごとにリスクを総合的に考えて、現状を「これで良しとする」のか「まだまだで次に進む」のかの判断を積み重ねながら治療を進めていて、目標値を目指して突き進んでいるわけではありません。プロトコール下で行われた研究の結果と実臨床からでる結果は少し違うのではないかと感じました。

今までのようにデザインされた研究に加えて、治療を進める判断過程も議論の土俵にあげてみたいと思います。「どういう判断」をして「どう治療」していったら「結果イベントの発症」はこうだったというようなデータの積み重ねができないものでしょうか。

判断過程は単純ではなく、それを理論的に比較検討するにはどう表現すればいいのか不明ですが、その判断力こそが実地医家の臨床力だと思うので議論し評価してみたいと思います。